陶磁器

緑釉鶏・緑釉鴨

(りょくゆうとり・りょくゆうかも)

  • 中国

  • 時代

    後漢時代(1〜3世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    2口

  • 法量

    鶏/幅 19.8 cm 高 19.0 cm
    鴨/幅 22.3 cm 高 16.1 cm

  • 解説

    後漢時代には、緑釉の明器(副葬品)が多く作られた。生活の中の身近なものを形作って埋葬するのが習わしで、中でも馬・犬・牛・鶏は大切な家畜としてモチーフにされ、出来もいいものが多い。この鶏と鴨は、緑釉がむらなく掛かり、また全体が程よく銀化している。対ではないかもしれないが、似通った作風の良品である。

三彩龍耳瓶

(さんさいりゅうじへい)

  • 中国

  • 時代

    唐時代(8世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    1口

  • 法量

    高 35.2 cm

  • 解説

    ギリシャの、アンフォラという取っ手付きの瓶に似ている。もとは金属やガラスなどの製品だが、7世紀ころから中国で陶器を材質として真似て作られた。この瓶は耳を龍の形にするなど、中国らしさも見られる。きめ細かい土で形作り、緑・茶・白の三彩釉を掛けて低火度で焼いている。釉薬が溶けて流れ、微妙に混じり合うところが見どころである。実用品ではなく、王族などの副葬品として作られた。

白釉水禽文枕

(はくゆうすいきんもんまくら)

  • 中国

  • 時代

    北宋時代(11世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    1口

  • 法量

    径 19.9 cm 高 8.9 cm

  • 解説

    灰色の素地に白土を塗り、透明釉を掛けて仕上げたものを白釉という。中国河北省の磁州窯またはその周辺で多く作られた。これは宋時代に流行した陶枕で、上面にのんびり蓮池を歩く鴨の姿が掻き落としで描かれている。鳥の背面を細かい丸い文様(珠文)で埋め尽くすが、これは金工の魚々子の技法をまねたものであろう。

青磁蓮弁文鉢

(せいじれんべんもんはち)

  • 朝鮮

  • 時代

    高麗時代(12世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    1口

  • 法量

    径 17.5 cm

  • 解説

    丸みをおびたおっとりとした姿の鉢。高台は小さく低めで、見込みは無文、胴外側に二重蓮弁文が3層浮き彫りされている。淡い緑色の透明性の青磁釉が高台までむらなく掛り、高麗青磁の完成期作として、破綻のない優作といえる。

掻落扁壺

(かきおとしへんこ)

  • 朝鮮

  • 時代

    李朝時代(15世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    1口

  • 法量

    高 24.0 cm

  • 解説

    鉄分の多い素地を白土で覆い、掻き落としなどの技法で文様を表した後、透明性の釉薬をかけて焼き上げる。こうした技法を粉青沙器といい、15世紀から16世紀にかけて盛んに作られた。扁壺は水などを入れて持ち歩く容器で、李朝時代には様々な装飾の扁壺が作られた。これは平らな面いっぱいに生い茂る樹木の葉をのびやかに描き、側面や肩部分は区切って幾何学的な文様が描かれている。素朴な作風ではあるが、手慣れて洗練された趣もある。

染付牡丹唐草文大壺

(そめつけぼたんからくさもんたいこ)

  • ベトナム

  • 時代

    黎朝時代(15世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    1口

  • 法量

    高 39.5 cm

  • 解説

    安南地方、今のベトナムで作られた染付の壺である。中国の染付を模倣しているが、口縁内側には施釉されておらず、また肩4箇所に小さな耳がつくのは珍しい。染付の発色もよく、大ぶりの優品といえる。

黒織部くい違い茶碗

(くろおりべくいちがいちゃわん)

  • 日本

  • 時代

    桃山時代(17世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    1口

  • 法量

    口径 15.1 × 10.9 cm 高 8.0 cm

  • 解説

    織部焼は、桃山という破格の時代を代表する焼き物である。産地の美濃地方は、近世初頭に日本で唯一色彩あふれる焼き物を作り、京都など大消費地を席巻したところである。
    当時、美濃焼のほとんどは茶の湯で用いられた。中でも織部焼は、茶人でもあった武将古田織部の好みを強く反映しているといわれ、斬新で奇抜な意匠が特徴である。これは全体が大きく歪み、口縁の一部に亀裂が入った茶碗。側面には黒い釉薬を大胆に掛け、掻き落として文様を描いている。底をみると、ヘラで削ったところに紐状の土を丸くつけて高台にしている。この荒々しさが、織部焼の茶碗の特徴である。中でも黒織部は、鉄分を多く含む「鬼板」と呼ばれる釉薬を使っていて、焼き上がりを急冷して漆黒の色を出している。歪んだ形の茶碗は当時「へうげもの」と呼ばれ、正円や四角といった決まりきった形から逸脱した桃山の美意識を象徴する。

織部片輪車文角鉢

(おりべかたわくるまもんかくばち)

  • 日本

  • 時代

    江戸時代前期(17世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    1口

  • 法量

    口径 20.2 cm 高 4.3 cm

  • 解説

    この角鉢は、対角に濃い銅緑釉をたっぷりと掛け、その間に片輪車と染織の匹田絞りのような文様を奔放な筆致で描いている。当時、京都の問屋では漆器、染織品、焼き物など様々なジャンルを扱っていて、各分野共通のデザインで製品の発注をおこなっていた。

織部笹透四方筒向付

(おりべささすかしよほうづつむこうづけ)

  • 日本

  • 時代

    江戸時代前期(17世紀)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    5口

  • 法量

    各/口径 5.9 × 3.2cm 高 11.0 cm

  • 解説

    懐石の席で、折敷に塗りの飯椀汁椀とあわせて供されるのが向付である。魚などの料理を盛るが、その形は「料理の容れ物」という以外にほぼ制約がなく、自由で斬新な意匠のものが多い。特に織部焼の向付は形も楽しく、緑釉や鉄釉、長石釉などの色が鮮やかで、多種多様な器が伝えられている。この筒形の向付は、細長い胴部の中ほどに底がつけられていて、その下部に笹の葉の形がくり抜かれている。土の厚さはとても薄く、またくり抜いた文様の縁や口縁部分は丁寧に磨かれていて、繊細な仕事からくる軽やかさが際だつ。

扁壺「聴涛」

(へんこ「ちょうとう」)

  • 作者

    崎山隆之(さきやまたかゆき)

  • 生没年

    1958生

  • 日本

  • 時代

    平成19年(2007)

  • 形質

    陶器

  • 員数

    1口

  • 法量

    高 28.5 cm 幅 51.5 cm

  • 解説

    うねる波と白い砂浜を連想させる不思議な形の花器である。作者の崎山隆之は伊豆下田生まれ。現在も西伊豆黄金崎に窯を構え、海への想いを込めた作品を創り続けている。材質は信楽の土で、轆轤を使わず板を立ち上げていき、それを2 枚ないし3枚組み合わせて形を作っている。胴部は空洞なので見た目ほど重量はなく、それが白い砂のさらさらと風に舞い上がる軽やかさとして連想される。表面の筋はすべて手作業で彫るという、陶芸と彫刻との融合をも目指した新しいかたちの焼き物である。