刀装具

櫂図小柄 銘 祐乗作 光昌(花押)

(かいずこづか めい ゆうじょうさく みつまさ(かおう))

  • 作者

    後藤祐乗(ごとうゆうじょう)

  • 生没年

    1440〜1512

  • 日本

  • 時代

    室町時代(16世紀)

  • 形質

    赤銅魚々子地据文

  • 員数

    1口

  • 法量

    長 9.7 cm

  • 解説

    小柄は、拵につく小刀の柄。赤銅魚々子地に金で3本の櫂を据文する。後藤家九代程乗光昌の極め銘がある。後藤祐乗は金工の名門後藤家の祖。美濃より京に出、足利将軍家に仕えた。高い彫金技術と洗練された作風で、江戸時代末期まで続く後藤家の格式を確立した。加納夏雄の箱書きがある。

後藤家十四代揃金具(倶利伽羅龍三所物)

(ごとうけじゅうよんだいそろいかなぐ(くりからりゅうみところもの))

  • 作者

    後藤家初代 後藤祐乗(ごとうゆうじょう)以下十四代まで

  • 日本

  • 時代

    室町時代(16世紀)

  • 員数

    14組1揃

  • 解説

    目貫・小柄・笄の一揃いを三所物と呼ぶ。本品は、後藤家初代祐乗から十四代桂乗までの倶利伽羅龍三所物を揃えた大名道具であり、鳥羽稲垣家が収集したものである。

月影透鐔 無銘 甲冑師

(つきかげすかしつば むめい かっちゅうし)

  • 日本

  • 時代

    室町時代(16世紀)

  • 形質

    丸形鉄地 鍛造

  • 員数

    1枚

  • 法量

    径 9.5 cm

  • 解説

    薄く大きな鉄鐔に、水面に映る月影が抽象的に透かしで表現されている。
    鐔は、柄を握る手を防護する装剣金具部品のひとつとして古墳時代から遺物が残るが、現在独立して鑑賞されるのは、主に室町時代以降の打刀につくものである。刀匠や甲冑師による簡素な鉄鐔の味わい、透かしのデザイン性や、真鍮をはじめとした象嵌による絵画的色彩表現などを手のひらの中で楽しむ、我が国独自に発展した美術品である。特に江戸時代中期から幕末までが最も華やかな時代であり、鐔専門の名工が技を競い合った。

塔橋花図鐔 無銘 鎌倉

(とうはしはなずつば むめい かまくら)

  • 日本

  • 時代

    室町時代(16世紀)

  • 形質

    丸形鉄地 鍛造

  • 員数

    1枚

  • 法量

    径 8.9 cm × 8.7 cm

  • 解説

    鉄鐔に、表に四重塔と橋、裏に花が浮き彫り出され、くくり猿と2つの扇形の透かしが肩に入る。鎌倉彫に似ていることからこの名で呼ばれる。

茗荷蔦透鐔 無銘 尾張

(みょうがつたすかしつば むめい おわり)

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(17世紀)

  • 形質

    丸形鉄地 鍛造

  • 員数

    1枚

  • 法量

    径 8.3 cm

  • 解説

    尾張は、京透しと並んで透し鐔の双璧とされる。鉄地に蔦の葉を輪郭線のみで、茗荷を容彫と毛彫で表す。茗荷は「冥加」に通じ、邪気を払うとされる。

茶席図鐔 銘 西陣住人埋忠重長

(ちゃせきずつば めい にしじんじゅうにんうめただしげなが)

  • 作者

    埋忠重長(うめただしげなが)

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(17世紀)

  • 形質

    丸形鉄地 鍛造

  • 員数

    1枚

  • 法量

    径 8.8 cm × 8.6 cm

  • 解説

    鉄地に格子窓を透かし、両面に水仙の生けられた一重切竹花入や塵取、羽箒、鐶などの茶道具を象嵌する風雅な図柄の鐔。重長は、京都西陣の埋忠派の鐔工。祖の明寿から三代目にあたる。

松樹透鐔 無銘 林

(まつじゅすかしつば むめい はやし)

  • 作者

    林(はやし)

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(17世紀)

  • 形質

    変り形鉄地 鍛造

  • 員数

    1枚

  • 法量

    径 8.2 cm

  • 解説

    鐔の輪郭も幹に見立て、三蓋松を図案化した鉄鐔。葛菱繋文の金象嵌を所々に入れる。細川家に抱えられた初代又七以後、肥後で活躍した林派は、良質な鉄による透しと細密な布目象嵌技法で独自の作風を確立した。

鶴丸透鐔 無銘

(つるまるすかしつば むめい)

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(17世紀)

  • 形質

    変り形鉄地 鍛造

  • 員数

    1枚

  • 法量

    径 8.2 cm

  • 解説

    鶴が羽を広げ舞う姿を図案化した鶴丸紋の鉄鐔。目には金象嵌が施され、嘴は毛彫りで表されている。

道成寺図縁頭 銘 大森英房(花押)

(どうじょうじずふちがしら めい おおもりてるひで(かおう))

  • 作者

    大森英秀(おおもりてるひで)

  • 生没年

    1730〜1798

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(18世紀)

  • 形質

    縁/赤銅据文
    頭/赤銅容彫

  • 員数

    1組

  • 法量

    縁/縦 3.9 cm 横 2.4 cm
    頭/縦 3.5 cm 横 2.0 cm

  • 解説

    縁頭は、装剣金具部品のうち、柄の両端を覆う金具。鐔側を縁、柄頭側を単に頭という。
    能や歌舞伎の演目で知られる『道成寺』(安珍清姫伝説)に取材した作。頭は赤銅地に高彫色絵で、蛇の尾が巻き付く竜頭を誇張した鐘をかたどり、縁は山伏姿の安珍像を据文する。大森英秀は江戸で活躍した町彫りの彫金師で、大森派の二代目。

鶏図縁頭 銘 石黒政明(花押)

(とりずふちがしら めい いしぐろまさあき(かおう))

  • 作者

    石黒政明(いしぐろまさあき)

  • 生没年

    1813〜?

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(19世紀)

  • 形質

    朧銀石目地高彫象嵌

  • 員数

    1組

  • 法量

    縁/縦 3.9 cm 横 2.5 cm
    頭/縦 3.5 cm 横 2.1 cm

  • 解説

    銀と銅の合金である朧銀(四分一)石目地にさまざまな色の金属で鶏を高彫象嵌する。石黒政明は横谷派の名工で、石黒派の祖となった石黒政常の門人。江戸に住み、華麗で装飾的な高彫色絵の作風を得意とした。

鷹捉雉子図縁頭 銘 津尋甫

(ようそくきじずふちがしら めい つじんぽ)

  • 作者

    津尋甫(つじんぽ)

  • 生没年

    1721〜1762

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(18世紀)

  • 形質

    赤銅魚々子地高彫

  • 員数

    1組

  • 法量

    縁/縦 3.9 cm 横 2.4 cm
    頭/縦 3.4 cm 横 1.6 cm

  • 解説

    赤銅魚々子地に、太い爪で枝に止まり眼光鋭く羽を広げる鷹を、頭から飛び出んばかりに高彫する。縁は柏樹の枝を高彫する。津尋甫は、阿波徳島藩抱え工の野村正道門人で、江戸で活躍した名工。

枝梅図鐔 銘 長常(花押)

(えだうめずつば めい ながつね(かおう))

  • 作者

    一宮長常(いちのみやながつね)

  • 生没年

    1721〜1786

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(18世紀)

  • 形質

    赤銅磨地高彫

  • 員数

    1枚

  • 法量

    径 6.4 cm

  • 解説

    素銅磨地に金、銀、赤銅を高彫色絵し象嵌する。両面に余白を生かし梅花を瀟洒に配す。一宮長常は越前に生まれ、京都で活躍した装剣金工家。画を円山応挙の師である石田幽汀に学んだ。写実的な作を得意とし、江戸の宗珉と並び称された。

枝梅水仙図縁頭 銘 一宮長常(花押)

(えだうめすいせんずふちがしら めい いちのみやながつね(かおう))

  • 作者

    一宮長常(いちのみやながつね)

  • 生没年

    1721〜1786

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(18世紀)

  • 形質

    素銅磨地高彫

  • 員数

    1組

  • 法量

    縁/縦 3.5 cm 横 2.0 cm
    頭/縦 3.2 cm 横 1.8 cm

  • 解説

    素銅磨地に金、銀、赤銅を高彫色絵し象嵌する。縁の梅の枝の直線と、頭の水仙の葉の曲線が対照的に描かれている。

幽霊図小柄 銘 夏雄刻

(ゆうれいずこづか めい なつおこく)

  • 作者

    加納夏雄(かのうなつお)

  • 生没年

    1828〜1898

  • 日本

  • 時代

    江戸時代・元治元年(1864)

  • 形質

    朧銀地平象嵌

  • 員数

    1口

  • 法量

    長 9.6 cm 幅 1.4 cm

  • 解説

    わずかな月明かりの中に、足のない幽霊が浮かび上がっている。朧銀地に平象嵌された幽霊は、銅や銀など数種の金属が組み合わされ、着物の皺や髪の毛、陰鬱な表情までもが片切彫りで表される。裏面には柳の木が片切彫りされる。長さ10cm未満の小さな小柄の中に、金属のみで夜の空気までをも描くかのような名品。
    加納夏雄は、幕末明治期の金工界を代表する名工。明治初期まで刀装具を制作し、明治期には初代の帝室技芸員、東京美術学校(現東京藝術大学)教授となり、多くの後進を指導した。写生を重んじ、生き生きとして格調の高い動植物の表現で独自の作風を確立した。

秋草虫尽図揃大小金具

(あきくさむしづくしずそろいだいしょうかなぐ)

  • 作者

    後藤一乗(ごとういちじょう)

  • 生没年

    1791〜1876

  • 日本

  • 時代

    江戸時代(19世紀)

  • 形質

    笄・小柄・縁/赤銅魚々子地高彫
    目貫/赤銅容彫

  • 員数

    1揃

  • 法量

    笄/長 21.3 cm
    小柄/長 9.5 cm
    縁/幅 2.1 cm 長 3.9 cm
    目貫(蜻蛉)/幅 1.5 cm 長 4.3 cm

  • 解説

    小柄、笄、大小の縁、目貫2組が一揃いとなり、秋草と秋の虫の揃いの意匠である。小柄、笄、縁には、一乗作の特徴でもある整然と並ぶ粒の細かい赤銅魚々子地に菊や薄、女郎花などの秋草に蜻蛉や蝶が遊ぶ様子が優美に高彫色絵され、2組の目貫は蝶、蜻蛉、鈴虫、蟋蟀、飛蝗が写実的に可憐に容彫される。後藤一乗は、室町時代より将軍家の御用を勤めた金工の名門である後藤家最後の名工。絵画にも秀で、後藤家伝統の格式の高さと、独自の瀟洒で雅味のある絵画的な作風で、加納夏雄とともに幕末明治期の金工を代表する作家である。